
「RYT200のカリキュラムって、具体的に何を学ぶの?」
「スクールによって内容が違うって聞くけど、基準はあるの?」
この記事では、ヨガアライアンスが定めるRYT200のカリキュラム基準について、4つの教育カテゴリーの内容と最低時間要件を詳しく解説します。
CONTENTS
RYT200のカリキュラムを理解するための基礎知識
RYT200とは
RYT200(Registered Yoga Teacher 200)は、ヨガアライアンス(Yoga Alliance)が認定する、200時間の指導者養成プログラムを修了した証です。
2020年2月27日から新基準(Elevated Standards)が施行され、教育カテゴリーが5つから4つに統合されました。
全200時間が教室での学習時間(Classroom Hours)とされ、対面・オンライン・またはその混合形式での提供が認められています。
カリキュラムの基本構造
RYT200のカリキュラムは以下の構造で成り立っています:
- 総時間:200時間 – すべて教室での学習時間(Classroom Hours)
- 提供形式:対面・オンライン・混合が可能 – 100%対面、100%オンライン、または両方の組み合わせ
- オンライン形式の場合:最低30時間が同期型 – リアルタイムで講師と生徒が同時に参加する形式(2024年1月以降の要件)
- 教育カテゴリー:4つ – それぞれに最低時間が設定されている
- 実習教育:最低10時間 – リードインストラクターとして実際に教える練習
重要なのは、各カテゴリーに「最低時間」が設定されており、その合計を満たした上で、残りの時間を各スクールが独自に配分できる点です。
RYT200の4つの教育カテゴリーと最低時間
ヨガアライアンスは、RYT200のカリキュラムを次の4つのカテゴリーに分類し、それぞれに最低学習時間を設定しています:
- Techniques, Training, and Practice(技術、トレーニング、実践) – 最低75時間
- Anatomy and Physiology(解剖学・生理学) – 最低30時間
- Yoga Humanities(ヨガの人文科学) – 最低30時間
- Professional Essentials(プロフェッショナル・エッセンシャル) – 最低50時間
合計最低時間:185時間
残りの15時間については、各スクールが独自の方針に基づいて4つのカテゴリーに配分します。この柔軟性により、スクールごとの個性が生まれます。

1. Techniques, Training, and Practice(技術、トレーニング、実践)- 最低75時間
このカテゴリーは、ヨガの実践に直接関わる技術を学ぶ領域です。
学習内容
アーサナ(ポーズ)
- 基本的なポーズから応用まで
- 正しいアライメント(身体の配置)
- ポーズの安全な入り方と出方
- 身体の個人差への対応
- プロップス(補助具)の使い方
プラーナーヤーマ(呼吸法)
- 基本的な呼吸の仕組み
- 様々な呼吸法のテクニック
- 呼吸と自律神経の関係
- クラスでの呼吸法の指導方法
瞑想
- 瞑想の基礎理論
- 様々な瞑想技法
- 集中力と気づきの育て方
- 瞑想の指導方法
マントラとチャンティング
- 伝統的なマントラの意味
- 発声方法
- クラスでの活用法
このカテゴリーの特徴
指導法との違いを明確にするため、ヨガアライアンスは「実践すること」と「教えること」を区別しています。
このカテゴリーでは、受講者自身がヨガの技術を体験し、深めることに焦点を当てます。一方、「どう教えるか」は4番目の「Professional Essentials」で学びます。
2. Anatomy and Physiology(解剖学・生理学)- 最低30時間
安全で効果的なヨガ指導のための身体の知識を学ぶカテゴリーです。
学習内容
人体システム
ヨガアライアンスの基準では、以下のシステムについて学ぶことが求められています:
- 筋骨格系 – 骨、関節、筋肉の構造と機能
- 神経系 – 闘争・逃走反応を含む神経の働き
- 呼吸器系 – 呼吸に関わる筋肉を含む呼吸の仕組み
- 循環器系 – 血液循環と心臓の働き
- 内分泌系 – ホルモンとヨガの関係
- 消化器系 – 消化機能への影響
ヨガ実践との関連
- 各アーサナが身体に与える影響
- 怪我のリスクと予防
- 身体の個人差への理解
- 禁忌事項(避けるべきケース)
- 特定の状態への配慮(妊娠、高齢者、怪我など)
このカテゴリーの重要性
解剖学は、単なる知識の暗記ではなく、実際のヨガ指導の安全性を確保するための実践的な学びです。
「なぜこのポーズで痛みが出るのか」「どうすれば安全に誘導できるか」といった実践的な問いに答えられる知識が求められます。
3. Yoga Humanities(ヨガの人文科学)- 最低30時間
ヨガの哲学、歴史、倫理を学ぶカテゴリーです。
学習内容
ヨガの歴史
- ヨガの起源と発展
- 様々な流派とその特徴
- 現代ヨガの成り立ち
ヨガ哲学
- ヨーガスートラ(パタンジャリのヨーガ経典)
- 八支則(アシュタンガ)
- バガヴァッド・ギーター
- ヤマ・ニヤマ(道徳規範)
ライフスタイルと倫理
- ヨガ的な生き方の原則
- 指導者としての倫理的責任
- 多様性への配慮
- 文化的な理解と尊重
- インクルーシブな(包括的な)指導環境
なぜ哲学が重要なのか
ヨガアライアンスは近年、この領域をさらに重視しています。ヨガが商業化する中で、その本質的な精神性が失われることを懸念しているためです。
哲学は抽象的なものではなく、「どう生きるか」「どう指導するか」という実践的な指針を与えてくれます。
4. Professional Essentials(プロフェッショナル・エッセンシャル)- 最低50時間
2020年の新基準では、Teaching Methodology(指導法)とPracticum(実習)が統合され、Professional Essentialsという1つのカテゴリーになりました。
このカテゴリーには、指導法の学習と実際の指導実習の両方が含まれます。
Teaching Methodology(指導法)の学習内容
指導の原則
- デモンストレーション(見本の見せ方)
- 観察力(生徒の状態を見る力)
- アシスト・アジャストメント(補助と修正)
- キューイング(言葉での誘導)
指導スタイルと技術
- 様々な指導アプローチ
- 対象者に応じた指導の調整
- クラスの雰囲気づくり
- シークエンス(流れ)の構成
- ペース配分
- 環境設定
指導者の資質
- 指導者としての倫理
- 生徒との関係性の築き方
- 継続的な学習の重要性
生徒の学習プロセス
- 生徒がどのように学ぶか
- 個人差への配慮
- 安全性の確保
ヨガ指導のビジネス面
- クラスの運営方法
- マーケティングの基礎
- 法的な配慮事項
Practicum(実習)の要件
Professional Essentialsの中で特に重要なのが実習です。
ヨガアライアンスの特別要件として、各受講者は最低10時間、リードインストラクター(主導教師)として実際に指導練習を行わなければなりません。
この時間には、フィードバックを受ける時間も含まれますが、単にアシスタントとして手伝う時間や、他の人の指導を観察する時間は含まれません。
Professional Development(専門的成長)
指導スキルに加えて、ヨガ指導者としてのキャリア形成に必要な知識も学びます:
- ヨガアライアンスの認定プロセス
- 倫理規定(Ethical Commitment)
- 継続教育の重要性
- マーケティングと集客
- 保険・契約書・請求書などのビジネス実務
なぜスクールごとにカリキュラムが違うのか?
最低時間と配分の柔軟性
ヨガアライアンスが定める各カテゴリーの最低時間は以下の通りです:
- Techniques, Training, and Practice:75時間
- Anatomy and Physiology:30時間
- Yoga Humanities:30時間
- Professional Essentials:50時間
合計:185時間
200時間のプログラムのうち、185時間が各カテゴリーの最低要件として配分され、残りの15時間については、各スクールが独自の方針で配分できる仕組みになっています。
スクールの個性が生まれる理由
この柔軟性により、以下のような違いが生まれます。
スクールAの場合
- アーサナの実践に多くの時間を配分
- 身体の使い方を徹底的に学べる
- フィジカルな面が充実
スクールBの場合
- 瞑想と哲学に時間を多く配分
- ヨガの精神的な側面を深く学べる
- マインドフルネスが充実
スクールCの場合
- 解剖学を特に深く学べる
- 機能解剖学やバイオメカニクスまで扱う
- 理論的な理解が充実
スクールDの場合
- 指導実践に多くの時間を配分
- ティーチング技術を徹底的に磨ける
- 実践的なスキルが充実

あなたに合ったスクールを選ぶには
カリキュラムの違いを理解した上で、以下を考えてみましょう:
自分は何を重視したいか
- 身体的な技術?精神的な学び?指導力?
将来どんな指導者になりたいか
- シニアヨガ、パワーヨガ、瞑想中心など
どんな学習スタイルが合うか
- じっくり理論派?実践重視派?
RYT200カリキュラムを見極める7つのチェックポイント
スクールを選ぶ際に確認すべき具体的なポイントをご紹介します。
1. 各カテゴリーの時間配分が明示されているか
優良なスクールは、4つのカテゴリーそれぞれに何時間配分しているかを明確に示しています。
「200時間」とだけ書かれている場合は、詳細を問い合わせましょう。
2. 実習時間は十分か
最低10時間の実習が義務付けられていますが、これでは不十分と感じるケースも多いです。
理想的には20時間以上の実習時間があるスクールがおすすめです。
3. 解剖学が実践と結びついているか
筋肉名を暗記するだけでなく、「このポーズではどの筋肉が働くか」「どう指導すれば安全か」まで学べるかを確認しましょう。
4. 哲学を日常に活かせる形で学べるか
古典の暗記ではなく、「この教えを現代の生活にどう活かすか」まで学べるスクールを選びましょう。
5. リードトレーナーの資格
2025年1月1日以降、RYS 200のリードトレーナーはE-RYT 500の資格が必須となりました。
講師が適切な資格と経験を持っているか確認しましょう。
6. シラバス(授業計画)の詳細度
日ごとのスケジュール、各セッションの学習目標、使用教材などが詳しく説明されているかをチェックしましょう。
7. 卒業後のサポート
資格取得後のコミュニティ、継続学習の機会、就職支援などがあるかも重要です。
オンライン形式と対面形式:学習形式の選択肢
RYT200の提供形式
ヨガアライアンス認定スクール(RYS)は、以下の3つの形式でRYT200プログラムを提供できます:
- 100%対面形式
- 100%オンライン形式(Distance Learning)
- 対面とオンラインの混合形式(ハイブリッド)
オンライン形式の要件(2024年1月以降)
オンライン形式またはハイブリッド形式を選択する場合、以下の要件があります:
- 最低30時間は同期型(Synchronous)で提供 – 講師と生徒がリアルタイムで同時に参加し、双方向のやり取りができる形式(ZoomやTeamsなどのライブ配信)
- 残りの170時間は非同期型(Asynchronous)も可能 – 録画視聴、オンライン教材での自習など、講師が不在でも学習できる形式
同期型(Synchronous)とは:
- リアルタイムのオンラインクラス
- 講師と生徒が同じ時間に参加
- 質問や対話が可能
- ZoomやGoogle Meetなどを使用
非同期型(Asynchronous)とは:
- 録画された動画の視聴
- オンライン教材での自己学習
- 自分のペースで学習できる
- 講師とのリアルタイムの接触はない
各形式のメリット・デメリット
100%対面形式
- メリット:講師から直接アジャストを受けられる、仲間との深い交流、集中した学習環境
- デメリット:通学時間と交通費、日程の融通が利きにくい、地理的制約
- 向いている人:体感を重視したい、仲間との学びを大切にしたい方
100%オンライン形式
- メリット:地理的制約がない、通学不要、比較的費用が抑えられる、自分のペースで学べる部分がある
- デメリット:細かいアジャストが受けにくい、自己管理が必要、通信環境に依存
- 向いている人:地方在住、仕事や育児との両立が必要、移動時間を節約したい方
ハイブリッド形式(対面+オンライン)
- メリット:柔軟性と直接指導のバランス、重要な部分は対面で学べる、録画で復習できる
- デメリット:学習環境の切り替えが必要、スケジュール管理が複雑になる場合がある
- 向いている人:バランスを取りたい、部分的に対面を重視したい方
RYT200カリキュラムに関するよくある質問
Q1. カリキュラムはどのスクールも同じですか?
いいえ、4つのカテゴリーと最低時間の基準は共通ですが、具体的な内容と時間配分はスクールごとに大きく異なります。
Q2. 200時間で本当に指導者になれますか?
200時間は基礎を学ぶための時間です。多くの卒業生は、さらに学習と実践を重ねてから本格的な指導を始めています。
Q3. 初心者でも受講できますか?
多くのスクールは初心者でも受講可能ですが、事前に3ヶ月〜1年程度のヨガ経験を推奨するスクールもあります。
Q4. オンラインだけで取得できますか?
はい、2024年1月以降、100%オンライン形式でのRYT200取得が可能です。ただし、最低30時間はリアルタイムの同期型オンラインクラス(Zoom等)で受講する必要があります。
Q5. カリキュラムに含まれないことは?
200時間を超える内容として、アーユルヴェーダ、タイマッサージ、エネルギーワークなどを追加で提供するスクールもあります。
Q6. 同期型と非同期型の違いは何ですか?
同期型はリアルタイムで講師と生徒が同時に参加する形式(Zoomライブなど)、非同期型は録画視聴など自分のペースで学べる形式です。RYT200では最低30時間が同期型である必要があります。
RYT200取得後のキャリアパス
RYT200を取得した後の進路は多様です:
就職・副業としての活動
- ヨガスタジオでのインストラクター
- フィットネスクラブでのクラス担当
- 企業向けヨガクラスの講師
- オンラインヨガの指導
独立・フリーランス
- 個人スタジオの開業
- レンタルスペースでのクラス開催
- 出張ヨガレッスン
- SNSやYouTubeでの発信
さらなる学び
- RYT500などの上位資格取得
- 専門分野(マタニティ、シニア、キッズヨガなど)の学習
- 解剖学や心理学の深掘り
自己成長のツールとして
- 指導は行わず、自分自身の健康管理やメンタルケアに活用
- ライフスタイルの質を高めるための学びとして
RYT200の費用相場と内訳
RYT200の費用は、スクールや学習形式によって大きく異なります。
通学型の相場:
- 約30万円〜60万円
オンライン型の相場:
- 約15万円〜40万円
費用に含まれるもの(スクールによる):
- 授業料
- 教材費
- ヨガアライアンス登録料(別途の場合もあり)
- 修了証発行費
安いからダメ、高いから良いというわけではなく、カリキュラムの内容と講師の質を総合的に判断することが大切です。
まとめ:自分に合ったRYT200プログラムを選ぶために
RYT200のカリキュラムは、ヨガアライアンスが定める4つの教育カテゴリーに基づいて構成されています:
- Techniques, Training, and Practice – ヨガの実践技術(75時間)
- Anatomy and Physiology – 解剖学・生理学(30時間)
- Yoga Humanities – 哲学・歴史・倫理(30時間)
- Professional Essentials – 指導法と実習(50時間)
各カテゴリーには最低時間が設定されていますが、残りの時間配分はスクールの裁量に任されています。
スクール選びで大切なこと
- カリキュラムの詳細を確認する – 各カテゴリーの時間配分を見る
- 自分の学習目標を明確にする – 何を重視したいか考える
- 講師の資格と経験を確認する – E-RYT 500を持っているか
- 実習時間の充実度をチェックする – 最低10時間、理想は20時間以上
- 卒業生の声を参考にする – 実際の体験談を聞く
同じ「RYT200」でも、カリキュラムの内容と質はスクールによって大きく異なります。
この記事で解説した基準を参考に、あなたの目標に合った質の高いプログラムを選んでください。