プラスチックごみ問題とは?世界と日本の環境問題への取り組みも紹介

朝起きて、夜寝るまでに私たちはどれほどのプラスチックに触れているのでしょう?歯ブラシやメイク用品、ランチにコンビニや自販機で買う飲み物、仕事帰りに買ったお惣菜のトレイなど数えきれないはずです。

プラスチックはその便利さから、私たちの身の回りの様々な製品や容器包装などに使われていて日常生活に欠かせない存在となっています。

その一方で、プラスチックによる環境汚染が世界的な問題となっています。とくに日本のプラスチックごみ排出量は世界2位であるため、早急な環境への対策が求められています。

本記事では、プラスチックごみの問題点、世界と日本の動向、そして環境に対して私たちがどういった取り組みができるのかを解説していきたいと思います。

プラスチックごみは何がいけないの?

プラスチックは利便性が高い一方で、自然界で分解することができないことが大きな問題となっています。年間の製造量はいまだ増加し続けていて、地球温暖化やプラスチックによる海洋汚染といった深刻な問題を招いています。

アメリカの大手コンサルティング会社であるマッキンゼーによると、世界で排出されるプラスチックごみは2025年までに現在の倍以上である2億5,000万トンにまで膨れ上がるとされています。リサイクルされるのはほんの一部で、多くは埋め立てられるか海へ投棄されているそうです。

では、具体的にどういった問題が指摘されているのでしょうか?使い捨てプラスチックによって引き起こされる問題は以下が挙げられます。

プラスチックごみによって引き起こされる問題

プラスチックごみを起因とした環境汚染が世界的に問題視されています。具体的には以下が挙げられます。

地球温暖化プラスチックは生産から廃棄までのすべての段階で、地球温暖化の原因となる温室効果ガス(CO2)が多く発生します。
資源の枯渇プラスチックの原料である石油は有限資源なので、大量のプラスチック消費は、資源が枯渇する原因になります。
海洋問題

プラスチック廃棄で大きな問題として指摘されているのが、プラスチックによる海洋汚染です。

  • 世界経済フォーラムと循環型経済を推進するエレン・マッカーサー財団は、世界全体で年間800万トンものプラスチックごみが海へ流出していると推計されており、このままでは2050年までに海の中のプラスチック量が魚の重量を超えると予測されています。
  • 国連環境計画(UNEP)は、プラスチックごみが毎年数十万もの海の生き物の死を引き起こしていると指摘しています。例えば、プラスチック袋は、クジラやカメなどがエサと勘違いして飲み込んでしまう例が世界中で報告されており、過去には東南アジアで死んだクジラの胃から、80袋以上のプラスチック袋が出てきたケースがありました。このように、プラスチックゴミは海洋環境へ深刻な影響を与えているのです。
  • 細かくなったプラスチックである、マイクロプラスチックは世界中の水道水からも検出されていて、その健康影響について多くの研究者が警鐘を鳴らしています。

「脱プラスチック」に向けた世界の動き

世界では、日本よりも早くプラスチック製品の使用禁止が行われるなど、「脱プラスチック」に向けて本格的な取り組みが行われています。以下で各国の取り組みを詳しくご紹介します。

各国の取り組み

アメリカ

プラスチックの廃棄量が世界で最も多いアメリカは、2021年11月に「国家リサイクル戦略」を発表し、2030年までにリサイクル率50パーセントを目標に定めています。また、大学やスタートアップなどの企業による、リサイクル関連の技術開発も積極的に行われています。

EU(欧州連合)

EU(欧州連合)は、プラスチックごみに関して世界的にも高い意識を持って取り組んでいます。例えば、2021年までに、使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する法案が可決されています。また、「EUプラスチック戦略」のもと、2030年までにEU内のすべてのプラスチック包装材をリユース・リサイクルすることを目指しています。

フランス

EU加盟国の中でも、脱プラスチックの動きがとくに活発なのはフランスです。

フランスで2020年に成立した法律によって、ファストフード店で使い捨ての容器や皿、カップを2023年1月1日から使用できなくなります。

この規制ではプラスチック製の容器だけではなく、紙容器までも使用禁止となり、イートインの容器はセラミックや樹脂、ガラスといった素材が使われるようになります。また、2040年までに全ての使い捨てプラスチック包装を無くす目標を掲げています。

世界の「脱プラスチック」への対策は以上になります。次は、日本の動向をご紹介したいと思います。

「脱プラスチック」に向けた日本の動き

深刻化するプラスチック問題に対して世界が急速に動き始めている中、日本はどのような対策をとっているのでしょうか?

2018年の国連環境計画のデータによると、日本の一人当たりの年間のプラスチック容器包装排出量は、世界第2位 (1位はアメリカ)でした。さらに、海に排出されたプラスチックゴミ800万トンのうち、2〜6万トンが日本から発生したものだと算出されています。

※参考:Jambeck JR et al : Plastic waste inputs from land into the ocean,Science (2015)

これだけの排出量があるにもかかわらず、世界と比較すると日本の取り組みは大きく遅れているといわれていますが、日本でもプラスチックの排出を抑えるための対策が行われています。以下2つの取り組みをご紹介します。

日本のプラスチック問題に対する取り組み

日本のプラスチック問題に対する取り組みとして「プラスチック資源循環戦略」と、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」をご紹介します。

プラスチック資源循環戦略

プラスチック資源循環促進法」は、プラスチック製品の設計から製造・販売・回収・リサイクルという全体の流れの中で地球に優しい循環型経済(サーキュラーエコノミー)の構築を推し進める法律として、2022年4月から施行されました。

廃プラスチックの有効利用率が低いことや、海洋汚染などから「3R+Renewable」を原則とし、プラスチック資源の循環、プラスチックによる海洋汚染の解決を目的とした戦略がまとめられています。

「3R+Renewable」とは?
  • Reduce(リデュース)…製品に使用する資源の量を少なくすること、廃棄物の発生を抑制すること
  • Reuse(リユース)…使用済みとなった製品を廃棄せずに、繰り返し使用すること
  • Recycle(リサイクル)…廃棄物などを原材料やエネルギー源として再利用すること
  • Renewable(リニューアブル)…製品に使用する資源を再生可能なものに代替すること
プラスチック資源循環戦略の内容:
  • ワンウェイプラスチックの使用を削減する
  • プラスチック資源を、わかりやすく、かつ、効果的に分別回収・リサイクルする
  • 可燃ごみ指定袋などに、バイオマスプラスチックを使う
  • 海洋汚染が生じないよう、ポイ捨てや不法投棄を撲滅する

また、プラスチック資源循環戦略では下記のような目標を掲げています。

  • 2030年までに、ワンウェイプラスチックの排出を累積25%抑制する
  • 2030年までに、容器包装の6割をリユース・リサイクルする
  • 2030年までに、バイオマスプラスチックを約200万トン導入する

以上が「プラスチック資源循環戦略」の内容でした。より詳しくチェックしたいかたは下記サイトより詳細をご覧ください。

環境省 プラスチック資源循環:https://plastic-circulation.env.go.jp/

 

海洋プラスチックごみ対策アクションプラン

 海洋プラスチックごみ対策アクションプランは2019年に日本が議長国となった策G20で策定されました。プラスチックごみの海への流出を抑えるために、下記のような対策が宣言されました。

海洋プラスチックごみ対策アクションプランの詳細
  • 国内の廃プラスチック処理・リサイクル施設の整備を支援する
  • 清涼飲料団体に、専用のリサイクルボックスの設置を要請する
  • 海ごみゼロウィーク」を作り、全国一斉清掃を行う
  • 自治体が行う海岸漂着物の回収や処理を支援する
  • 技術開発やプラスチックに代わる素材の生産設備の整備などを支援する

日本のプラスチック問題に対する動きは以上です。これらの大きな目標を達成するためには、私たち一人一人のアクションが重要になってくるので、環境のために実際にどういったことができるのか、ぜひ考えてみましょう。次は、日常で実践できる具体的なアクションをご紹介します。

私たちはどういったことができるのか?

プラスチック廃棄を減らすために普段の生活の中でどういったことができるのでしょうか?明日からでも簡単に実践できるアクションを下記ピックアップしました。

環境のために、私たちが今すぐできるアクション

  • マイバッグを持ち歩き、レジ袋もらわない
  • マイボトルやマイカラトリーを持ち歩く
  • プラスチックフリーの製品を選択する
  • 量り売りなど容器を使わない買い物
  • 清掃活動に参加する

これらは一部ですが、この他にも、できることはたくさんあります。気になったら都度調べてみるようにしましょう。

さいごに

プラスチックの問題点、世界と日本それぞれの取り組みについてお伝えしました。プラスチック製品そのものは、私たちの普段の生活に必要なたくさんの物に使用されています。ですので、私たちの生活に欠かせないものであり、今後も必要とされるものでもあります。大切なのは、プラスチック製品への向き合い方を変え、行動していくことです。少しずつ、できることから始めてみましょう。