「男性は働き妻子を養うべきだ」
「女性は仕事においても細やかな気配りができて当然のことである」
など性別に捉われた概念にモヤっとしたことはありませんか?
こうしたジェンダーバイアスに私たちは幼少期の頃から無意識にさらされ、固定概念や偏見を生んでしまっています。
ジェンダーバイアスが存在することにより、性差や属性によって能力のある人がキャリア選択に不利になったり、男女間で収入格差が起きたり、また個人の多様性が尊重されないなどの問題が起こります。
本記事では、ジェンダーバイアスをめぐる日本の状況から、問題点、具体的な例まで交えながら知ることができます。
ジェンダーバイアスとは
ジェンダーバイアスとは、男女の役割や「こうであるべき」などと言った固定概念や偏見を人々や社会が無意識に持つことです。
その正体は無意識の思い込みを意味する「アンコンシャス・バイアス」にあります。
認知バイアスの一種であり、脳の認知機能や行動経済学などの分野で研究が進んでいます。
ジェンダーバイアスはその中に分類されるものです。
ジェンダーとは
ジェンダーバイアスについて本格的に考えていく前に、ジェンダーの概念について確認しておきましょう。
ジェンダーとは人間を多義的にとらえたときの、社会的・文化的な役割としての「性」。
元々は生物学的に分類される女性、男性に対して付加された社会的または文化的性差のことです。
性別にとらわれて「○○すべき」などと言った思い込みや制約、差別を問題視するシーンで使われることが多い言葉として知られています。
日本におけるジェンダーバイアスの現状
世界的な人権意識の高まりやダイバーシティ推進などの流れから、日本のジェンダー平等を取り巻く状況について国際的に問題視されることも度々起こっています。
日本のジェンダーの現状から、ジェンダーバイアスについて考えてみましょう。
各国における男女格差を表す、日本のジェンダーギャップ指数の2022年調査結果から世界からの客観的な状況を知ることができます。
順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)、先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。
分野別には、教育や健康分野の順位は水準である一方で「経済」の順位は146か国中121位(前回は156か国中117位)、「政治」の順位は146か国中139位(前回は156か国中147位)と、政治の意思決定や企業や経済団体などにおける女性の活躍には高いハードルがあることが浮き彫りとなりました。
また、ジェンダーの問題は女性のみならず男性にも深く関わっています。
例えば、日本は男性の育児休業制度が世界で1位であるにも関わらず実際の取得率は13.97%とまだまだ低水準であることが挙げられます。
ジェンダーバイアスの問題点とは
ジェンダー自体は、世界各地で社会的な風習や文化として存在するものですが、差別や偏見につながってしまうことがジェンダーバイアスの問題点です。
ジェンダーバイアスがあることによって、社会にはどのような課題や問題点があるのでしょうか。
労働環境や雇用面の格差
女性の労働参加率は年々増加し、共働き世帯も今や当たり前のこととなりましたが、ジェンダーバイアスは根強く残っています。
ポジションであれば管理職、経営者などのリーダー像には男性を、事務職、一般職などのサポート役には女性と言った傾向が、職業であれば理系職員や研究職には男性、保育士や看護師には女性といったバイアスがかかっていることにより、キャリアの選択の幅が狭まってしまうことは避けられません。
賃金格差
男女間の賃金格差は、G7(主要7カ国)の中で一番大きい結果で他国と大きく差が開いていると世界不平等リポート2022は発表しています。
また、経済協力開発機構(OECD)において正社員の男女における賃金格差が日本は4番目に大きいとの調査結果もあります。
女性管理職が少ないことや、性差により求められる役割の固定化をはじめとして出産・育児の負担割合が依然として 女性が多く負担する傾向にあるために、平均勤続年数が短いことや非正規雇用者の割合が多いことにもつながっているのです。
人権問題
本来、人間は男らしさや女性らしさにとらわれず尊重・評価されるべき存在です。
しかし、「女性は気立てが良く、一歩下がって男性を立てる存在」、「男性は理性的で強くたくましい、女性をリードする存在」などのジェンダーバイアスが、結果として暴力や差別行為につながる場合があります。
女性の場合DVなど暴力、男性の場合本人の意思を無視した形の長時間労働などが挙げることができます。
ジェンダーバイアスの例
日常生活の様々なシーンの中にジェンダーバイアスは潜んでいます。
以下で具体的な例を挙げていきます。
性別を連想させるカラーや形状のジェンダーバイアス
・女子はピンクやレッド、男子はブルーやブラックと固定化する
・男性はシンプルでミニマムな形状を好み、女性は華やかでキラキラした装飾を好む
ワードによるジェンダーバイアス
・「料理男子」、「化粧男子」、「女性議員」、「女性格闘家」など社会的役割を強調する
・「女子力」、「男気じゃんけん」など性別による「らしさ」の固定化
職場におけるジェンダーバイアス
・仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い
・女性の上司には抵抗がある
家庭におけるジェンダーバイアス
・実の親、義理の親に関わらず、親の介護は女性がするべきだ
・男性は結婚して家庭をもって一人前だ
教育におけるジェンダーバイアス
・女性には高い学歴やキャリアは必要ない /職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ
・女性に理系の進路(学校・職業)は向いていない
地域やコミュニティーにおけるジェンダーバイアス
・PTAには、女性が参加するべきだ
・自治会や町内会の重要な役職は男性が担うべきだ
引用元:男女共同参画局 無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス) - 事例集 -
ジェンダーバイアスへの取り組み
ジェンダーバイアスの例や、何が問題なのかが分かったと思います。
ここではジェンダーバイアスの是正のためどんな取り組みがあるのか紹介します。
日本政府の取り組み
日本政府は、ジェンダーギャップが大きい経済・政治分野に特に注力する方向を示しており、「女性版骨太の方針2022」
において女性の経済的自立や登用目標達成などを提示しています。
ひとつは「女性の経済的自立」で、看護・介護・保育など女性が多い職種の所得の引き上げやデジタル人材の育成などです。
次に、企業の女性役員比率ランキングの掲載、国家公務員の女性職員の職域拡大などが掲げられています。
国家が積極的な姿勢をアピールすることにより、現状を打開することに加え未来を担う若者の意識が変わることにも期待したいですね。
P&Gの取り組み
グローバル展開するP&Gでは、ジェンダーへの取り組みのひとつとして広告分野においてジェンダーバイアスに取り組んでいます。
全米広告主協会が行った「#SeeHer」調査では、40%の女性が、何らかの形の固定観念や客体化、また蔑みなどによって、不正確に描写されていると感じていることが明らかになりました。
引用元:P&G ジェンダー平等
このような偏見に取り組むため、洗濯洗剤「アリエール」のインド向けCMでは男女関係なく洗濯に参加することを促す内容が放映されています。
ストーリーは、一般家庭で働く女性だけが平日の帰宅後に家事をする様子が描かれ、その場に居た別に暮らす彼女の父親が疑問を感じる描かれたもので、最後に流れる「洗濯は女性だけの仕事?」のテロップが印象的です。
ジェンダーバイアスについてのQ&A
本文中では取り上げることができなかったジェンダーバイアスについての疑問点について触れていきます。
ジェンダーバイアスのチェックする方法はある?
のサイトにてジェンダーバイアスのチェックが可能です。
「恋愛・結婚編」、「家庭・家族編」、「職場編」、「学校教育編」、「地域生活編」の5つのテストが用意されており、
各項目に「はい」。「いいえ」で回答する形式です。
手軽にチェックできる内容となっていますので、ぜひトライしてみましょう。
さいごに
ジェンダーバイアスは身近なところに潜んでいるので、常識を疑いまずは気がついてみることが重要です。
ジェンダーに捉われない社会を目指すことで、個人が自由なキャリアや生き方を選択できるようになったり、企業側も人口減の日本社会において優秀な人材を性別に関わらず雇用し共に歩んでいくことが可能になるでしょう。