ヨガではポーズ名に動物の名前が付いていることが多いのですが、今日はキャットアンドカウと呼ばれるポーズをご紹介します。
見ている分には難しくない動きなのですが、実際やってみると思うようにできない・・・と感じているかたもいるかもしれません。
筆者は現在週10本オンラインヨガのクラスを担当しています。その中でもキャットアンドカウのポーズを行うクラスは5本。ウォーミングアップとしてだったり、クラス後半に体をクールダウンするためにこのポーズを入れています。お客様からも人気の高いポーズの1つですし、他のインストラクターのレッスンに参加したときもよく出てくるポーズだと体感しています。
一体どんな効果がこのポーズにはあるのか、
どうやって動くといいのか、
どんなことに意識を向けるといいのか
意外と知らないキャットアンドカウのこと、詳しく知っていきましょう。
CONTENTS
1.キャットアンドカウとはこんなポーズ
まずはどんなポーズなのかをやり方を見ていきましょう。
1.四つ這いになります。両手は肩幅、脚は腰幅にしましょう。肩の下に手首、腰の下に膝が来ているかも確認しておきます。
2.お尻の位置がずれないように意識をしながら、吸う息でおへそをマットへ近づけます。手でマットを押し、耳と肩の距離を離し、視線は斜め上を見ます。
3.吐く息で、手でマットを押し、背中を丸めていきます。肩の間の背骨を高くつき上げるようにします。視線はおへそを覗き込みましょう。
4.ご自身の吸う息、吐く息に合わせて、背骨1つ1つを波打つようなイメージでなめらかに動かしていきます。肩や腰などは背骨の動きと連動してくるため、背骨の動きのみ意識してください。
キャットアンドカウと言われることが多いこのポーズですが、他にも呼び方があります。
サンスクリット語では、ビダラ・マールジャーラ・アーサナとも言います。
実はこのポーズは2つの動きが1つになっているのです。
日本語だと牛のポーズと猫のポーズになります。
反らしている状態のときを猫のポーズ、丸めている状態のときを牛のポーズと呼びます。
初心者向けクラス~運動量が高いクラスまで幅広いクラスで出てくるポーズです。
2.キャットアンドカウの効果・効能
あらゆるクラスで出てくるこのポーズ、一体どんなメリットがあるのかを知っていきましょう。
今回ご紹介する効果・効能の参考文献は全て、オムヨガRYT200資格資料を引用しています。
オムヨガとは、東京・恵比寿にあるヨガインストラクター養成クラスを行いつつ、“ヨガのある人生”を広げることをビジョンにしているスクールです。筆者は2016年にこのスクールにてRYT200を取得し、今回はその際使用していた教科書を参考文献にしております。
2-1.背骨のストレッチ
このポーズでメインに動かす部位は背骨です。背骨は私たちを支えている大切な骨。
しかし現代人は長時間同じ姿勢でいることが多くなりました。これによって背骨まわりの筋肉が凝り固まり、体に不調を感じるようになります。
背骨が凝り固まることによって特に不調を感じやすいのは肩や腰。悪化すると腕が上がらない、ぎっくり腰になってしまう可能性もあります。
多くの人が不調を抱える肩や腰へのマッサージやストレッチは多くあり、実践しているかたも多いかと思いますが、意外と忘れられているのが背骨です。
日常生活の中でなかなかやらないからこそ、反らす・丸めるといった動きを行うことで血行が良くなり、凝りも解消されていきます。
筆者自身、ヨガレッスンを行う一方でパソコン業務の時間も多くあります。そうなると知らぬ間にどんどん上半身が凝り、姿勢が悪い状態になっていることも多いです。そんな日の夜は、なるべくお風呂上りや夜のちょっとした隙間時間を使って、キャットアンドカウのポーズをやっています。凝りが緩和されると同時に、丸まっていた背中が伸びていく感覚を味わっています。
2-2.首・肩・背中の疲労緩和
首・肩・背中の不調の原因は背骨を動かしていないためです。
私たちの体は全て繋がっています。背骨を動かさない状態が続き背骨まわりの筋肉が凝ってくると、そこに繋がっている部位もだんだんと動かしにくくなります。筋肉が強ばっている、つねに緊張している状態が続くことは体にとって大きな負担です。
動かせていない筋肉を動かす、ほぐすことによって、血行が良くなり疲労物質が流れて疲労を緩和することができます。
2-3.体と心を落ち着かせてくれる
このポーズでは自律神経の中の“副交感神経”を優位にしてくれる働きがあります。
副交感神経とは、体と心をリラックスさせてくれる効果があります。
普段は寝る前などにこの神経が優位になり眠りにつくのですが、イライラしているとき、せかせかしているとき、緊張しているときに寝付けない経験をしたことはありませんか?もしくは寝る直前までブルーライトを浴びていることによって、眠気が覚めてしまう経験をしているかたは多いかもしれません。
これは副交感神経に上手く切り替えられていないためです。
そんな状況のときにこのポーズをぜひ試してください。切り替えられていなかった自律神経を整えてくれる効果が期待できます。
自然とあくびがでる、力んでいた体とココロが少しずつ解放されていき、深い眠りへといざなってくれるでしょう。
筆者自身、良くないと分かっていつつも、寝る前にスマホであれこれ見てしまうことがあります。そうするとやはり眠気は飛んでいってしまい、いざ寝ようと思ったときに目が冴えている、頭のスイッチがオフにならないというときがあります。そんなときは一度布団から抜け、ベッドの上でキャットアンドカウのポーズを繰り返し行います。そうすると、あら不思議。さっきまであんなに冴えていた頭もオフモードへと切り替わり、横になってポーズをとっていたときと同じ、深い呼吸を繰り返すと気付いたら寝ています。明日の朝が早いのに寝られない!と焦ると余計に寝られなくなってしまうときも、一度起きてキャットアンドカウのポーズをやってみる。これでぐっすり寝られますよ。
3.キャットアンドカウで陥りやすいこと
キャットアンドカウがうまくできないといったことが起きないために、陥りやすいことを事前に把握しておきましょう。もし同じ問題で悩んでいるようであれば、4章にて解決策を記載していますので参考にしてみてくださいね。
3-1.背骨を上手く動かせない
インストラクターと同じように反っている、丸めているつもりでも、自分のポーズを見るとあまり動きがない、四つ這いの状態と大差ないと感じる場合があるかもしれません。
原因としては、背骨まわりの筋肉の強ばりです。普段の生活で同じ姿勢が続いているかた、運動習慣があまりないかたは特に動かしにくさを感じるでしょう。
3-2.手首が痛くなる
四つ這いで行うポーズですが、手首が痛いと感じる場合があります。
原因は、反るとき、丸めるときにお尻が前後に動いてしまい、体の重さを手首ばかりで支えようとしているためです。全体重が手首に乗ってしまうことによって、負荷がかかり過ぎ痛みへと繋がっていきます。
3-3.肘が痛くなる
肘が痛くなりやすいかたは、肘の関節が必要以上に反ってしまう、“肘の過伸展”と呼ばれる状態です。
とくに女性がなりやすいと言われていますが、男性でも過伸展のかたもいます。
必要以上に反れると、負荷がかかった際に痛めやすくなる、ケガをしやすくなる可能性があります。
自分が過伸展かどうかチェックする方法をご紹介します。
肘の過伸展チェック方法
四つ這いになります。横から見て、肘の関節部分が前に出ている(くの字と反対の状態)ようであれば、過伸展気味と言えるでしょう。
過伸展状態はこのような感じです。柔らかいかたはもっと関節が前に出ています。
過伸展でない状態はこのような感じです。肘の線同士が自然と向き合うことができます。
キャットアンドカウのポーズ以外にも、特に手で体を支えるポーズのときに注意が必要です。
4.キャットアンドカウを完成するためのコツ
キャットアンドカウで最大限効果を発揮するために、どういったコツをおさえるといいのかをご紹介していきます。ぜひ意識しながら練習してみてくださいね。
4-1.1ポーズずつ練習する
キャットアンドカウのポーズは名の通り、猫と牛のポーズ2つを繋げたポーズになります。最初から2つ一緒にやる必要はありません。まずはご自身がやりにくい、あまりできないと感じるポーズのみやる習慣をつけると良いでしょう。
筆者がレッスンを行っているときに、特に猫のポーズ(背中を反らす)のほうがやりにくさを感じているかたが多い印象にありますし、私自身もそうです。なので筆者はレッスンが始まる前に、猫のポーズだけを呼吸に合わせて練習をしています。
日々練習を重ねていても、日によって動かしやすいときもあれば、動きにくいと感じる日もあります。ぜひその変化を一緒に楽しんでみてください。私たちの体は日々変わっています。見た目では変わらないように見えますが、状況や環境によって細かく変化しています。
一気に大きな変化を期待せず、コツコツ練習してみてくださいね。
4-2.お尻が前後に動かないようにする
背骨を動かそうと思っているのに、お尻が前後に動いてしまっていることがこのポーズではよくあります。
お尻が動いてしまうと、実は背骨まわりが動かせていないため、本来の効果・効能が期待出来なくなってしまいます。
お尻の位置は両ひざの上です。ここからずれないように意識をして、反らす・丸める動きを行ってみましょう。
難しい場合には、可能であれば誰かにお尻が動かないようにサポートしてもらってください。
それが難しい場合、1人で練習している場合は、ムービーに撮って様子を確認してみましょう。どのタイミングでお尻が前後にずれちゃうのかを知るだけで意識が変わっていきますよ。
4-3.手でマットを押す
背骨ばかりに意識を向けるポーズですが、実は手でマットを押すこともポイントになってきます。
手でしっかりとマットを押すことによって、土台が安定し、背骨を動かしやすくなります。
つねに力んで押す必要はありません。反り始め、丸め始めは軽く押す程度、だんだんとマットを押す力を強くし、反る・丸める動きをサポートするようなイメージでやってみてください。
特に丸める動きのときは、手でマットを押す力が加わることでより丸めやすくなりますよ。
4-4.過伸展の人は肘を伸ばしすぎない
肘が過伸展のかたは、このポーズに限ったことではないですが、肘を伸ばしすぎないように意識する必要があります。
肘が過伸展だと、四つ這いのときに肘の線が顔と同じ方向に向いてしまいますが、肘の線が向き合うようにリラックスしてください。
特に頑張りすぎてしまうとき、集中して夢中になっているとき、肘を突っ張ってしまいやすいかもしれません。肘へのダメージを軽減するためにも、緩めながら動かすクセをつけてください。
5.こんなときはキャットアンドカウをやってはダメ
ゆったり動くポーズ、リラックスクラスでもよく出てくるポーズの1つですが、やってはいけないときがありますので覚えておいてくださいね。
5-1.背骨に痛みがあるとき
これだけ背骨を動かすことがメインのポーズです。背骨に痛みがある、違和感があるときはやらないようにしましょう。
ヨガ=健康に良い、体にいいものですが、全て痛みなどを解消する万能なものではありません。ちょっとくらいなら大丈夫と自己判断はなるべくせず、まずはお医者様に診てもらい、治ってから心地よくヨガの練習をしてみてくださいね。
5-2.手首に痛みがあるとき
日常生活を送っている分にはあまり影響が出ていないとしても、このポーズのときは体重がかかってきます。痛いときはもちろん、治りかけのときもこのポーズは避けるようにしましょう。
いかがだったでしょうか?よく出てくるポーズだからこそ、深掘りしてみるともっとこのポーズを好きになれるのではないでしょうか。今よりもっと体にも心にもプラスになるように練習を続けてみてくださいね。