インターネットを通じて、驚異的なスピード・量の情報が流れ込んでくる現代社会。
布団に入ってもなかなか寝付けない、夜中に目が覚めてしまって寝付けなくなってしまうなど、睡眠に問題を抱えている人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の調査によると、直近一ヶ月間で睡眠に何らかの問題を感じたことがあると回答した人は全体の約3割にものぼります(厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要)。
ストレスを低減したり、集中力を向上したり、気持ちをコントロールしやすくするなど様々な効果が期待されることから、近年注目されているマインドフルネス。睡眠に対しても効果が期待できるという研究結果が発表されています。
ある実験では、睡眠障害を持つ被験者にマインドフルネス瞑想を実践してもらったところ、実験終了から半年以上経っても睡眠の質が改善したとという結果が得られたそうです。(参照: 「The effect of mindfulness meditation on sleep quality: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」 )。
ぐっすりと眠るために脳のスイッチをオフモードにする方法として、マインドフルネスを取り入れてみませんか?
CONTENTS
マインドフルネスの実践で、睡眠に期待できる効果
マインドフルネスの実践で睡眠に期待できる効果について、
- 寝付きが良くなる
- 睡眠の質が良くなる
この2点を詳しく解説していきます。
寝付きが良くなる
睡眠の問題として、よく耳にすることの一つが「布団に入ったけれど、なかなか眠ることができない」という寝付きの問題です。
悩みや考え事を抱えているとき、考え事がぐるぐる頭を巡ってしまって寝付けない経験をしたことはありませんか?
昨日の失言や、「あのときああしていれば」という後悔、明日の大事な商談、楽しみな来月の旅行について・・・頭の中で過去や未来の出来事を行ったり来たりと、忙しく考える状態に陥っているのです。
そんなときは過去や未来の出来事に心を振り回されて、まるでその出来事が今起こっているかのように心配したり、悲しんだり、怒りを感じたりします。
でも実は、「いまここ」では何も起こっていません。
「いまここ」では、横になり、布団に入って、眠ろうとしているだけです。
マインドフルネスでは、「いまここ」で起こっていることだけに目を向けます。
「いまここ」で見えるもの、音、匂いや感覚に集中することで、過去や未来についての考え事から一歩離れて安心して眠りに向かう心の状態を作ることができます。
睡眠の質が良くなる
2つ目の効果として、睡眠の質が良くなることが挙げられます。
私たち人間は、90~120分でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すという睡眠サイクルを持っています。
記憶や思考を整理する浅い睡眠であるレム睡眠に対し、ノンレム睡眠は脳を休める深い睡眠です。
特に、眠りはじめの最初の睡眠サイクルでのノンレム睡眠は最も深い眠りと言われ、この最初のサイクルは「黄金の90分」といわれます。
『スタンフォードの眠れる教室(著:西野 精治)』によると、この「黄金の90分」の間には、「脳と体の休息」「記憶の整理・定着」「ホルモンバランスの調整」「免疫力アップ」「脳の老廃物を取る」という、5つの重要な生理現象が行われます。
この最初の90分サイクルにスムーズに入ることができていないと、長い時間眠ったはずなのにあまり良く眠れた気がしない、疲れが取れないといった質の悪い睡眠になってしまいます。
しっかりと最初の深い睡眠に入っていくには、昼間活発に活動するために交感神経が優位になっていた自律神経を、リラックスモードの副交感神経優位に切り替えなければなりません。
神経の切り替えというと難しそうに聞こえますが、実は簡単に自分でコントロールすることができます。
その方法が、呼吸です。
浅く早い呼吸をすると交感神経が優位に、深くゆっくりとした呼吸をすると副交感神経が優位になります。
マインドフルネスでは、「いまここ」に集中する方法の一つとして呼吸に集中する練習法が用いられます。
普段無意識にしている呼吸を、意識的にすることでマインドフルな状態になります。それによって呼吸が自然と落ち着きます。
そして、落ち着いた呼吸を通して神経バランスが整います。
これにより、最初の深い睡眠にはいりやすくなり、睡眠の質が向上します。
簡単に実践できる、マインドフルネス
睡眠に効果的なマインドフルネス、すぐに実践できる簡単な方法を紹介しますので、ぜひ生活に取り入れてみてください。
呼吸の観察
シンプルに自分の呼吸に意識を集中し、観察してみる方法です。
呼吸に集中して観察してみるだけ、短時間でもできるので、初心者さんにもとてもおすすめです。
- 楽な姿勢で座り、背筋を伸ばし、不安がなければまぶたを閉じます。
- いま自分がしている自然な呼吸を観察します。吸う息で胸が膨らんだり、吐く息が鼻の下に当たったりする感覚に気づいていきます。
- 続けているうちに、呼吸から意識が離れてしまったら、「意識が離れていたな」と気付き呼吸の観察に戻ってきましょう。
- 2~3分続けたら、一度大きく深呼吸してまぶたを開きます。
ボディスキャン瞑想
自分の身体のパーツに意識を向けて、そのパーツの感覚に集中してみる瞑想法です。
横になったほうが行いやすいので、朝起きてすぐや、眠る前におすすめの方法です。
- ゆったりと仰向けに横になり、自然な呼吸を行います。不安がなければまぶたを閉じます。
- 身体の余分な力を抜いたら、足の先から体幹、腕、肩、首、頭と自分の身体を下から上にスキャンしていくように意識を向けていきます。
- 意識を向けている身体のパーツに集中して、そのパーツで感じている感覚を受け取ってみましょう。
- 全身がスキャンできたら、意識を呼吸に戻し、3回ほどゆっくりと呼吸を味わったらまぶたを開きます。
Youtubeなどで、誘導音声を聞きながら行うのもおすすめです。
さいごに
うまく睡眠が取れていないと、身体が疲れてくるばかりか、いつの間にか心まで疲れてしまいます。
マインドフルネスは、「いまここ」にあることに意識を集中すること。
つまり、「あ、私はいま眠りたいのにうまく眠れないでいるな」という自分の状態に気がつくことも一つのマインドフルネスです。
うまく眠れない自分に気がついたら、呼吸の観察やボディスキャン瞑想など、手軽に実践できるマインドフルネスを取り入れて、心と身体をリセットして落ち着けてあげましょう。