ヨガクラスの後半でよく出てくるポーズがあります。それは、“バランスポーズ”。いつもより不安定な状態になりながら、意識を集中させる時間を作ります。
このバランスポーズで代表的なもののひとつが、立ち木のポーズです。難易度で言うとそこまで高くないため、初心者向けクラスにも頻繁に出てくるでしょう。
筆者はヨガインストラクター歴約7年。現在はオンラインレッスンを中心に活動していますが、私のクラスでも立ち木のポーズをよく練習します。多くの人が知っているからこそ取り入れやすいという点や、軽減法~難易度を上げる方法まで幅広く練習出来るためお気に入りのポーズです。
知っておいて損はない立ち木のポーズ。どんな魅力的なポーズなのか見ていきましょう。
1.立ち木のポーズとはこんなポーズ
まずはポーズの取り方を見ていきましょう。
1.マットの真ん中でタダーアーサナになります。まわりにぶつかって危ないものがないか確認してください。
2.左脚を軸足にし、右足裏を内ももにつけましょう。両手は胸の前で合掌します。
3.余裕があれば合掌を上げ、視線も上を向きます。そのまま穏やかな呼吸を繰り返します。
4.吐く息とともに両手両足を解放し、反対側も同様に行っていきます。
立ち木のポーズができているか3つのチェックポイント
- 軸足の足裏全体がマットに付いているかどうか
- 骨盤・上半身が正面を向いているかどうか
- 呼吸が止まらず、継続出来ているかどうか
日本語で立ち木のポーズと言ったり、サンスクリット語でヴリクシャ・アーサナと呼ばれることが多いポーズです。英語ではstanding tree poseと呼ばれています。
ヨガクラスにはポーズの構成があります。バランスポーズは、それまで動いて上がっている心拍数や気持ちを落ち着かせて、最後のシャヴァーサナに入れるよう行う目的のひとつあります。そのためレッスン後半に行うことがほとんどです。
バランスポーズはいくつもありますが、何個も行うというよりそのクラスに合ったポーズをひとつ練習することが多いでしょう。立ち木のポーズは難しすぎず取り組みやすいポーズですので、全クラスで出てくることが多いバランスポーズです。
2.立ち木のポーズの効果・効能
バランスをとるだけがこのポーズの魅力ではありませんよ。一緒に見ていきましょう。
参考文献は、いちばんよくわかるYOGAポーズ全集・オムヨガRYT200養成コーステキストです。
2-1.バランス力アップ
まず1番に期待出来ることはバランス力アップです。普段生活しているときにあまりバランス力について意識をすることはないかと思います。
しかし、立ちながら靴下や靴を履こうとしたときやズボンを履こうとしたとき、今は当たり前にできていることが年齢とともに難しくなる場合があります。これはバランス力の低下が原因のひとつと考えられます。
バランス力を向上させようと思ってもなにから始めれば?と悩むのであれば、ヨガのバランスポーズがオススメですよ。
2-2.脚の筋力強化
次に期待出来ることは、脚の筋力強化です。
寒くてなかなか外出しにくかった季節が終わり、今度は暑すぎて外に出にくい季節が近づいてきています。世界と比べてみると、日本人は座っている時間が長いと言われています。そうったこともあり、どうしても脚の筋力が落ちやすい状況にいます。
脚の筋力が落ちることによって、年齢を重ねたとき歩けない状態になりやすい、下半身のむくみがなかなか解消出来ない、ちょっとした段差につまづきやすくなるといったデメリットが考えられます。健康寿命が伸びている今、いつまでも自分で歩ける下半身をキープ出来ることが健康寿命を伸ばすポイントのひとつだと言われています。
2-3.集中力アップ
大人になってから、自分の集中力が下がっている気がしていませんか。
学生の頃は、60~90分の授業を座って聞くことが多かったため、集中力を保ちやすい環境でしたが、今はなかなかそうもいかないというかたも多いのではないでしょうか。
大人になればなるほど、自分以外のことを考える時間が増え、ひとつのことに向き合う時間が減ってきています。しかし、なにかに集中する時間とは頭も心もクリアにできる大切な時間です。
バランスポーズでは、大人になって失いがちな集中する時間を取り戻してくれますよ。
2-4.体幹強化
バランスポーズをキープするためには、脚の筋力だけでなく体幹も必要です。
立ち木のポーズでは無意識のうちの体幹を使っています。逆のことを言うと、体幹がないと安定しにくいです。
正しい姿勢をキープするために体幹は必須です。しかし、体幹強化だけにフォーカスすると飽きがきやすい、きつくて続かないという場合もあるかもしれません。楽しみながら強化できる立ち木のポーズは適したポーズと言えるでしょう。
3.立ち木のポーズで陥りやすいこと
幅広いクラスで登場する立ち木のポーズですが陥りやすいこともあります。一体どんなことなのでしょうか?
3-1.片足立ちになれない
バランスポーズで1番陥りやすいことと言えば、片足立ちになれないでしょう。
普段の生活で、片足立ちになることはなかなかないかもしれません。サッとできてしまうかたもいれば、グラグラ揺れてしまうかたもいます。またいつもはできるのに今日は安定しないといった場合もあります。バランスポーズはその日のあなたの内側の状態に影響を受けやすいです。
3-2.マットから離している脚の膝が横を向かない
マットから離している脚の膝が正面を向いているかたが時々います。
バランスをとることに集中している、少し無理をしているとこうなりやすいですが、できるだけ曲げた膝は外側に向けていきたいです。外側に向けることによって、股関節まわりの筋肉を刺激することが可能です。
3-3.バランスを取ることに集中しすぎて呼吸を忘れちゃう
バランスポーズは集中力を高めてくれる効果が期待できる一方、バランスを取ることに集中しすぎて呼吸が止まってしまう場合があります。集中すること自体悪いことではないですが、呼吸が止まってしまうことは避けたい状態です。
4.立ち木のポーズを完成するためのコツ
様々な陥りやすいことがありましが、完成するためにはどういったことを意識すると良いのでしょうか?コツを見ていきましょう。
4-1.脚を置く位置を変える
立ち木のポーズの完成形で片脚は軸足の内ももに添えることが多いですが、必ずしもそうでなければいけないわけではありません。バランスがとれない、片足で立てない場合には段階を踏んで練習していきましょう。例えば、足先をマットに置くでも良いですし、足裏をふくらはぎに添えるのも良いでしょう。ひとつ注意してほしいこととして、膝に添えると痛めるリスクが出てくるためやめてください。
まずはご自身がやりやすい場所を見つけ、片足で立つことに慣れるようにしましょう。
4-2.手の位置を低くする
立ち木のポーズ完成形で両手は上に伸ばします。この状態は片足でバランスを取ろうとするとき、難易度が上がっている状態です。ポーズ完成が難しいと感じる場合や膝が正面を向いてしまっているかたは、一度胸の前に合掌を戻しましょう。
両手を上げた状態はいつか出来たら良いなといったチャレンジポーズです。まずはひとつひとつ確実に練習していきましょう。
4-3.軸足の親指付け根に意識を向ける
片脚立ちになったとき重心が外側にいってしまうかたは、軸足の親指付け根に体重を乗せる意識を持ってみてください。この意識だけで格段にバランス力がアップします。
これは立ち木のポーズだけでなく、他のバランスポーズにも共通して言えることです。ぜひ覚えておいてください。
4-4.呼吸を整えてからポーズに入る
バランスポーズをとると呼吸が止まってしまう場合、ポーズに入る前に呼吸を整える時間を少し持ちましょう。呼吸が止まっていると、体も心も緊張状態になり快適にポーズが取れません。クセになってしまうこともあるため、少し呼吸を落ち着かせてからポーズをとるようにしてみてください。
5.こんなかたは注意が必要
バランスポーズをとるとき、どんな状態のときはやらないほうがいいのか知っておいてください。
5-1.膝を痛めているかた
立ち木のポーズでは膝に集中して負荷がかかるわけではないですが、痛めているのであればお休みしてください。無理をしてよろけてしまう、転倒してしまっては大変です。
5-2.貧血気味のかた
バランスポーズは普段より不安定な状態になります。貧血気味と感じるとき、ポーズ中にフラッとなってしまっては大変です。お休みするようにしてくださいね。
ヨガを始めたばかりのかたから慣れているかたまで、幅広いかたが練習する立ち木のポーズ。一見するとただ片足で立つだけのポーズに見えますが、実はそれだけじゃないということが伝わりましたでしょうか。バランスポーズは慣れるまで人によって時間が掛かります。周りと比べることなく、自分のペースで少しずつ練習していくよう心掛けてくださいね。