最近メディアでも耳にすることの多い「ジェンダー」という言葉。
どんな意味を持つ言葉なのか、ご存知ですか?
なんとなく性別に関係する言葉のような気はするけれど、正確にはよく知らない、という方も多いのではないでしょうか。
ジェンダーとは、社会的・文化的な役割としての性別のことを指します。
生まれて14日以内に提出する出生届。
これに基づいて私たちの戸籍上の性別が決まります。
そこから人生におけるジェンダーとの付き合いがスタートします。
ジェンダーという言葉の持つ意味合いを正確に理解することは、社会において自分の性別がどんな意味合いを持つのかを知ることへと繋がります。
出生届が出されてから先、一生の付き合いになるジェンダー。
人生をともに歩む相棒ともいうべき存在だからこそ、知ることで自分を客観的に見つめるための大きなヒントになってくれます。
私は国際基督教大学でジェンダー・セクシュアリティ研究を専攻して卒業し、現在はOMYOGAのRYT500でジェンダーの講師をしているもちづきまりもといいます。
ジェンダーなんて全く興味を持ったことなかった!という方にも分かりやすく、「ジェンダーとはなにか」を解説してみようと思います。
「性別」を構成する要素
性別とはそもそもなんでしょうか?
私たちは何をもって自分の性別を決定づけているのでしょうか?
実は私たちは性別というものを認識するとき、いくつかの軸によって認識しています。
今回の記事では、一番下にある「社会的・文化的な役割としての性別」、「ジェンダー」について解説します。
ジェンダーとは
ジェンダーとは、社会的・文化的な役割としての性別のことだと述べましたが、社会的・文化的な役割としての性別とは、具体的にはどんなことを指すのでしょう。
社会的・文化的な役割としての性別
まずは「家族」という小さな社会の中で考えてみようと思います。
料理、洗濯といった家事や、子供のお世話、生活のためのお金を稼ぐなど、家族で暮らす中には様々な仕事があります。
こうした仕事を家族のメンバーが分担することで、家族という小さな社会が成立しています。
そしてこの家族の仕事分担は、家族の外の更に大きな社会のあり方によって、しばしば固定されていきます。
例えば、男性は育児休業が取りづらい、女性は出産のためにキャリアが中断するとその後昇進しづらいという社会だとすると、生活のためのお金を稼ぐという仕事は「お父さん」の仕事になりやすく、子供のお世話という仕事は「お母さん」の仕事になりやすいということです。
こうして、
お母さんの役割は子供のお世話をすること
という、社会における役割分担(社会的役割分業)が成立していきます。
そして、「お父さん」「お母さん」という役割には性別が関わります。
広辞苑第六版によると「お父さん」は「男親」、「お母さん」は「女親」という意味だとされています(「広辞苑」第六版)。
お母さんの役割は子供のお世話をすること
という役割分担は、言い換えれば、
女性の役割は子供のお世話をすること
という性別による役割分担(社会的性役割分業)を指しているのです。
性別によって社会の中で担う/期待される役割が異なるという考えのもと、性別に対してそれぞれの役割に応じたイメージ、期待するあり方、社会的な意味が付与されていき、固定化されていきます。
こうして出来上がるのが、社会的・文化的な役割としての性別、ジェンダーです。
ジェンダーステレオタイプ
ジェンダーは、その人の身体的な機能としての性別とは直接関わりがありません。
例えば、女性の身体は妊娠・出産ができるという機能を持っていますが、その身体的機能によって子供の世話ができたり、家事ができたりするわけではありません。
ですが、社会的な役割分担の中で、子供の世話や家事をする時間が男性と比較して多かったり、子供の世話や家事を担当する人として期待され訓練・教育される機会は男性と比較して多くあります。
これにより、「女性は子供の世話や家事が得意だ」というイメージが形成されます。
こうした、それぞれの性別に付与された役割に基づいて形成される、固定観念やイメージを「ジェンダーステレオタイプ」といいます。
ジェンダーステレオタイプの例としてはこんなものが挙げられます。
- 男性はリーダーシップに優れている、女性はサポートに優れている
- 女の子はかわいい、男の子はかっこいい
- 女性は感情的、男性は論理的
- 男性は理系、女性は文系 etc…
また、イメージと逆の属性の人に名付けをすることもジェンダーステレオタイプの一種です。
- 可愛らしいものが好きな男性はオトメン
- 子育てしながら働く女性はワーママ
- 子育てに積極的な男性はイクメン
ジェンダーステレオタイプは、その人の能力や個性によって付与されるイメージではないので、その人個人の「その人らしさ」と矛盾することもあります。
個人の表現や、振る舞い、あり方がジェンダーステレオタイプによって制限されてしまうことは、ジェンダーにかかわる大きな問題の一つだといえます。
さいごに
私たちは社会の中で様々な「らしさ」を期待されて生きています。
時代の変遷とともに、より自由に、個性を大切にしていこうという潮流の中で、個人の「その人らしさ」を尊重することが重視されつつありますが、それが社会の要求する「女性らしさ」「男性らしさ」と矛盾することもあります。
「らしさ」のあり方が変わっていく過渡期にあって、「ジェンダー」という概念を理解することは、社会において自分の性別がどんな意味合いを持つのか、どんな「らしさ」が期待されているのかを客観的に見つめ直すきっかけになります。
そして客観的に見つめることは、人生の相棒ともいえる自分の「性別」に対して選択肢を持つことへと繋がります。
どんな表現や振る舞いをしようか、どんなあり方で生きていこうかを自分自身で選択するためのヒントとして、「ジェンダー」をぜひ生活の中で見つめてみてください。