「フッ!フッ!フッ!」と短く息を吐き出すのが特徴的な「カパーラバーティkapalabhati(カパラバティ)」
頭がスッキリして、お腹も引き締まるなどの効果もあり、ヨガのレッスンでも呼吸法として取り入れることも多いのですが、正確には呼吸法ではなくクリヤー(浄化法)と呼ばれるものです。
クリヤーの目的は身体をキレイに浄化することにあります。
カパーラバーティをデトックス法としておすすめしたい理由はここにあります。
さらにカパーラバーティには浄化だけでなく副次的にさまざまな効果があります。やり方はシンプルなので、押さえるべきポイントだけ押さえておけば、気軽に日常に取り入れることができます。
1章ではそもそもカパーラバーティとはなんなのか、
2章ではその効果効能、
3章ではカパーラバーティのやり方を参考動画とともに、
4章ではカパーラバーティをうまくできないと感じる場合の対処法、
5章ではカパーラバーティをやってはいけない人とシチュエーションをご紹介します。
「カパーラバーティについてあれこれ知りたい!」という方は1章から、「日々を快適にするツールとしてすぐに使いたい!」という方は2章からお読みいただいても大丈夫です。
この記事では、どこよりも詳しくカパーラバーティを解説します。
CONTENTS
知っておきたいカパーラバーティ3つの知識
カパーラバーティkapalabhatiは「光る頭蓋骨」
カパーラバーティとはサンスクリット語で「光る頭蓋骨」を意味します。Kapal カパルは「頭蓋骨・前頭」、bhatiバーティは「光・輝き」です。
(ちなみに英語ではSkull Shining Breath「スカルシャイニングブレス(ブリージング)」そのままの翻訳ですね)
呼び名の由来は、カパーラバーティを行なった後、頭がスッキリとしてクリアになったような感覚になるからでは?と言われています。
たしかに実践してみると「頭蓋骨が輝いてる感じかも?」なんて思えてきます笑
知らなかった!という方は、そのあたりもどんなふうに感じるか、意識してみると面白いかもしれません。
カパーラバーティは呼吸法ではない
カパーラバーティはクリヤー(浄化法)
呼吸によって身体を整えることから、単純に呼吸法として紹介されることも多いカパーラバーティですが、正確にはクリヤー(浄化法)の1つです。
私もヨガのレッスンなどで何年もカパーラバーティをすることがあったものの、RYT200の資格を取るまで単なる呼吸法の1つだと思っていました……。
いわゆるヨガの呼吸法(調気法)は「プラーナーヤーマ」と呼ばれています。
「プラーナ」とは人体においてはいわゆる「気」であり、人体以外では「生命力」と解釈されることもあります。
「ヤーマ(ヤマ)」は「制御する」ということ。
つまりプラーナーヤーマとは「プラーナをヤーマする」、プラーナと呼ばれるエネルギーを制御するという意味です。
カパーラバーティはプラーナヤーマの準備
クリヤー(浄化法)は、このプラーナーヤーマを行うための準備として行われるものです。その目的は体内の生理作用に外部から意識的に刺激を加えることにより、プラーナの通り道(ナーディー)である消化管を浄化・活性化させることにあります。
少し難しい表現になってしまいましたが、クリヤーをすることでプラーナーヤーマがやりやすくなるということです。
なかでも身体をキレイに浄化するための6つの浄化法を「シャット・カルマ」と呼び、カパーラバーティはそのうちの1つに数えられます。
1・ダウティ 内臓(食道・胃など)の清掃
2・バスティ 下部消化器、特に直腸(肛門)の浄化
3・ネーティ 鼻孔の清掃
4・トラータカ 眼の浄化
5・ナウリ 腹直と内臓を浄化
6・カパーラバーティ 喉から肺までの気道下部を浄化する
ネーティは俗に言う「鼻うがい」で、他のクリアも呼吸ではない方法を用いて行います。呼吸をメインに使ってクリアを行うのはカパーラバーティだけです。
カパーラバーティは喉から肺までを浄化することを目的としていますが、肺に水や布を入れてキレイにすることは出来ませんから、空気の出し入れ、つまり呼吸で浄化するという発想に至ったのではないかと思われます。
とすれば、やはりプラーナというエネルギーを制御するという目的のプラーナーヤーマと、浄化目的のカパーラバーティは別ものだということがよくお分かりになるのではないでしょうか。
カパーラバーティとそっくりだけど全く違うバストリカ呼吸法
カパーラバーティによく似た呼吸法にバストリカがあります。
バストリカは息を素早く外に吐き出すことから、ふいごの呼吸とも呼ばれています。
なかにはバストリカはカパーラバーティの穏やかなバージョンという説明をしているところもありますが、これは全くの別物だと考えます。
前述した通りカパーラバーティはクリヤー(浄化法)であり、バストリカはプラーナヤーマ(調気法)なのでそもそもの目的が異なるからです。
ただ混乱してしまう理由は、やり方が似通っていること。
カパーラバーティとバストリカのやり方や指導法についてはヨガの流派などによっても違いがあり、明確に2つについてこことここが違うと動きだけを見て言い切ることは出来ません。
最近はカパーラバーティがプラーナーヤーマの1つとして取り上げられたりしている理由はここにあるのかもしれません。
ある流派では「カパラバディはエネルギーを上に上げ、バストリカは下に降ろしていく」といった考えもありますし、息の仕方も、両鼻を使うカパーラバーティも片鼻ずつ交互で使うカパーラバーティ(ゲーランダサンヒター教典にあるタイプ)もあります。
これらについて「何が正しい、間違っている」とジャッジすることは出来ませんし、する必要もないと考えています。さまざまなやり方に違った利点や魅力があるからです。
今回の記事ではOMYOGAの見解として、カパーラバーティとバストリカの違いをご紹介します。(OMYOGAでの指導のベースの1つとなっているのは、ヨガの古典ハタプラディーピカーの記述解釈です)
カパーラバーティ | バストリカ | |
---|---|---|
効果 (個人差があります) | 呼吸器/消化器の刺激 | 呼吸器系/消化器系の刺激 |
息の吸い方 | 自然に息を吸う (自然に入ってくる量だけ吸う) | 素早く息を吸う |
実践時のイメージ | ※スシュムナーを上昇して 頭上が光り輝くイメージをする | 心臓・のど・頭部へ抜けるような イメージをする |
※スシュムナーとは、プラーナ(気・生命エネルギー)の通り道であるナーディと呼ばれるものの1つです。わかりやすく解剖学的にあてはめれば中枢神経と考えられています。
カパーラバーティのやり方
ヨガの多くの呼吸法と同じくカパーラバーティも基本は鼻呼吸で行います。
1・息を吐き、自然に息を吸い込む。
(吸い込めるところまで吸い込むのではなく、自然に入ってくる量だけ吸う)
2・腹部を使い、息を吐く。 この時、シュッという音がします。
3・自然に息を吸う。
2と3をリズミカルに繰り返す(15〜30回を1セットとして、2、3セット)
※初めての方は少ない回数から行い、慣れてきたら徐々に回数を増やしましょう。
※正しく出来ている場合はお腹が膨らんだりへこんだりします。動いているかを確認するため、慣れるまでは右手を下腹部に当てて行なってもいいです。
カパーラバーティの効果
カパーラバーティは伝統的なヨガの位置付けでは身体の浄化法ですが、現代人の生活に役立つような副次的な効果があります。ヨガを深めるという観点だけでなく、身近なことを目的として日常に取り入れてみるのもオススメです。
※ただし効果・効能には個人差があります。
ダイエット効果がある
・腹部の脂肪燃焼
・腹筋を鍛える
・消化器系の調整
・血行不良の改善
カパーラバーティは息を吐くときに腹筋を強く収縮させるため、下腹部が鍛えられる呼吸といえます。ウェスト、下腹部あたりをキュッと引き締めたい方はしっかりと腹筋を意識しましょう。
さらにカパーラバーティを行うと胃腸の調子も整い、消化能力が増すと言われています。便秘が治ったという方もいます。
「消化能力が増したら、食べたら食べただけ太ってしまうのでは?」と思われた方もいるかもしれませんが、じつは消化が良くなると食べたものが脂肪になりにくいという研究があります。
さらに胃腸の働きが悪くなって消化不良を起こすと、基礎代謝が低下し、むくみにもつながります。ダイエット成功のためには代謝をあげて巡りを良くすることは必須です。
ストレス解消効果がある
・心のバランスが整う
・頭と心がスッキリする
これはカパーラバーティに限ったことではありませんが、呼吸がコントロールできると間接的に自律神経をコントロールすることが可能になります。その結果、心のバランスを整えることができます。
呼吸と自律神経の関係等について詳しくは「ヨガ8大呼吸法!驚きの効果とやり方を初心者から経験者まで丸わかり徹底解説」でもご紹介しましたので参考にしてみてください。
特にカパーラバーティは鼻孔の通りもよくなるため、脳に多くの酸素が行き届き、強く息を吐くことで頭や心の中のモヤモヤが外に吹き飛ぶように出ていくようなイメージがしやすい技法です。結果的に、頭も心もスッキリとした感覚がもたらされます。
実践をしてみると力強い呼吸を繰り返すため、明るくポジティブなマインドに変化していくように感じる方も多いのではないかと思います。
カパーラバーティが朝に行うことを勧められるのも納得です。
インド・スリランカ発祥の伝統医療アーユルヴェーダの観点からは、カパーラバーティにはKapha(カパ)という水と土の性質をバランスする作用があるとされています。カパが乱れるとやる気がなくなり無気力になることがあり、それをカパーラバーティで整えることでやる気や活力を呼び覚まします。
呼吸器系(花粉症・喘息)の浄化効果がある
・鼻孔や肺を浄化する
カパーラバーティ本来の意味としては、この浄化こそ最も本質的な効果と言えるでしょう。実践するときは、肺の中に残った古い空気をすべて吐き出し、新鮮な空気を取り込むことをイメージしてみてください。普段の呼吸では使わない肺のすみずみまで使っていることを意識すると更なる呼吸器系の浄化が期待できます。
具体的には花粉症対策としてもオススメされるカパーラバーティですが、最初から鼻が詰まっていると実践することは難しいので、ひどくならないための予防として春先以外の日常にも取り入れていただけたらと思います。
花粉症の症状がすでに出ているときは、カパーラバーティの前に鼻をかんだり、ツボ押しなどで鼻づまりを解消させてから行うのがいいでしょう。それも難しい場合は、口呼吸で行なっても大丈夫です。
一説では喘息にも効果があるという話もありますが、これに関しては主治医の先生に相談のうえ、自己流ではなく指導者のもとで実践するようにしてください。
カパーラバーティがうまくできない? ケース別対処法
カパーラバーティはコツさえ覚えてしまえば効果を引き出す呼吸として難しいものではありませんが、はじめはうまくいかないと感じることもあるかもしれません。初心者の方がカパーラバーティができないと感じるケースの原因と対処法をまとめてみました。
なお、カパーラバーティをして不快な症状が現れたときは無理せずすぐに中断して休みましょう。
対処法は後日あらためてチャレンジする際に意識してみてください。
頭がクラクラする、息苦しくなる
考えられる原因
- 「吸う」「吐く」のバランスが悪い
息を吸うことに意識を向けすぎてしまい、過呼吸気味になるケースです。
息を吸うためには、まず息を吐くことが大切。
しっかりと息を吐けば自然に息を吸うことができます。
力が入りすぎていることもあるので、リラックスして行なってみましょう。 - ムーラバンダが抜けている
ムーラとはサンスクリット語で「根」を、バンダとは「締める・縛る」を意味します。ヨガではバンダを意識することでプラーナと呼ばれる生命エネルギーをコントロールします。ムーラバンダとは会陰部にあるバンダのことです。解剖医学的には骨盤底筋を収縮させている状態です。この部分を締めることで、横隔膜を最大に動かすことができるのでカパーラバーティのような強い呼吸をするときは、特に意識して行なってください。
お腹が痛くなる、気持ち悪くなる
考えられる原因
- 食後の直後など胃腸に食べ物が残っている
カパーラバーティは胃腸を整える効果がありますが、それは胃腸を呼吸をすることでマッサージして整えているからです。つまり食後にカパーラバーティをするということは、満腹のお腹をマッサージされているのと同じような状況になってしまいます。
お腹がいっぱいの時にお腹を押されたら・・・それは当然お腹が痛くなったり気持ち悪くなったりしますよね。カパーラバーティは空腹時に(食後の場合は2時間以上は空けて)行いましょう。
カパーラバーティをやってはいけない人、やってはいけない場面
カパーラバーティを実践するにあたっての注意点です。
原則として身体に何らかの疾患がある場合は、自己判断せず専門家の助言のもと行なってください。
・妊娠中の方
・生理中の方
・高血圧の方
注意すべき場面
・食事のあと
お腹を激しく動かすので、必ず空腹時に行うこと。お腹が痛くなったり気持ち悪くなったりすることがあります
・寝る前
覚醒の方向に向かうので寝つきが悪くなることがあります。
(朝や仕事前など活動的になりたいタイミングで行うのがオススメです)
カパーラバーティの難易度は?
カパーラバーティの難易度☆☆☆☆
カパーラバーティはコツを覚えてしまえばさほど難しくはありませんが、その回数や呼吸の速さを変えていくなど、体得のレベルに幅があります。
その視点で今回は難易度(☆5つが一番難しい)と設定しました。
前述の別記事でヨガの8大呼吸法を紹介しましたので、興味があればそれらの呼吸法とも比べてみてください。(以下はその中で設定した難易度です)
ウジャーイ 難易度☆☆☆
シータリー 難易度☆☆
シッカーリ 難易度☆
バストリカ 難易度☆☆☆☆
ブラーマリー 難易度☆
まとめ
今回はカパーラバーティについて解説しました。
カパーラバーティは非常に力強い呼吸を使った浄化法です。その分、効果も大きく体感もしやすいので人気があります。
ヨガをしている方であればレッスン前に、そうでない方も日常に取り入れて頭がスッキリとする感覚を体感してみてください。
初心者の方はまずは少しずつ、経験者の方はさらに理解を深め、実践に反映させていただけたらと思います。