イライラする、疲れやすいなど、多くの人が抱えている「ストレス」。
多様化した社会で日々頑張る現代人には、ストレスに関する悩みは切っても切り離せない問題かもしれません。
令和元年の「国民生活基礎調査 」によると、12 歳以上の者(入院者を除く。)では約 47.9%が日常生活での悩みやストレスが「ある」と回答しています。(図1 出典:厚生労働省 令和元年「国民生活基礎調査」図20)
国民の半数近くは何らかのストレスを抱えているようですね。
悩みやストレスが「ある」と回答した割合が多い年齢層は、男女ともに30代~50代。また男性よりも女性のほうが割合が高く、中でも30代と40代の女性は60%以上も悩みやストレスがあると回答しています。(図2 出典:厚生労働省 令和元年「国民生活基礎調査」図21)
年齢や性別によって仕事やプライベートで変化が生まれ、担う役割が変化していることが関係していそうです。
私たちはストレスをゼロにしたい!と願いますが、生きていると想定外の出来事が起こるもの。実現するのは容易ではありません。それよりも、いかにストレスと向き合って軽減するかを考えるのが現実的。
そのためには、まずは相手(ストレス)を知ることです。
今回は、ストレスの要因となる「ストレッサー」について解説していきます。
ストレッサーにはどんな種類があるのか。生活に存在するストレッサーについて知り、ストレスとうまく付き合えるようになりましょう。
CONTENTS
1.ストレッサーって何?4種類あるストレッサー
ストレスとは、歪み(ゆがみ、ひずみ)が生じた状態のことを差し、ストレスを発生させる刺激となるものを「ストレッサー」と呼びます。
ストレッサーの分類の方法はいくつかありますが、厚生労働省のHPでは「物理的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「生物的ストレッサー」「心理的社会的ストレッサー」の4つの種類があるとしています。
普段、「ストレスが溜まった!」「ストレスを発散しに行こう!」などと表現しますが、私たちが「ストレス」と言っているものはこの中の「心理的社会的ストレッサー」を指していることがほとんどです。
次章からは多くの人が悩まされている心理的社会的ストレッサーを中心に、ストレッサーの4つの種類について解説していきます。
2.心理的社会的ストレッサーとは?
心理的社会的ストレッサーは、人間関係や仕事上の問題、家庭の問題、社会的行動に伴う責任、将来に対する不安などが該当します。
仕事をしたり、家族と暮らしたりと、人が社会生活をしていると当たり前のように直面するものです。
令和元年の「国民生活基礎調査」でも、悩みやストレスの原因の上位には男女ともに「自分の仕事」「家族との人間関係」「家族以外との人間関係」がありました。
心理的社会的ストレッサーの具体的な例を見ていきましょう。
2-1心理的社会的ストレッサーの具体例
心理的ストレッサーとは、不安、緊張、恐れ、怒り、焦り、憎しみ、寂しさなどの個人的な感情のこと。
また、社会的ストレッサーは人間関係のトラブルや自身の社会的な役割の変化、社会問題などにより生まれます。
心理的社会的ストレッサーは家庭、学校、職場など様々な環境に存在して、私たちに影響を及ぼします。具体的な例を紹介しましょう。
- 人間関係のトラブル……親子や夫婦など家族の人間関係、友達との人間関係、上司・部下や同僚の人間関係、隣人との人間関係
- 家庭での役割……父や母、夫や妻として求められる役割の負担が大きい、家事や育児の負担が大きい
- 職場での役割……能力以上の役割が与えられている、責任ある立場が重荷だ
日常の様々なことがストレッサーとなる可能性があるようです。
実際にもめ事が起きている場合もあれば、「責任が重すぎる……」と内心で感じているケースもあります。
予測できないものほど、強いストレッサーになりがち。厄介な出来事が多いと感じる人は、心理的社会的ストレッサーに強く影響されているのではないでしょうか。
2-2労働者が抱える心理的社会的ストレッサー
上記で令和元年の「国民生活基礎調査 」によると男女ともに悩みやストレスを感じている割合が高いのは30代~50代だとお伝えしました。その悩みやストレスの原因を見ると、この世代で突出して高かったのが、「自分の仕事」でした。
労働者が抱えるストレッサーについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
厚生労働省の「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%。
その内容の上位を見ると、「仕事の量」が43.2%と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が33.7%、「仕事の質」が33.6%と続いています。
職場ではノルマや評価、解雇や転職についてなど、多くのストレッサーが存在します。
日々認識されるストレッサーとしては、納期やノルマに追われる、といった仕事量に関するものや、失敗したらどうしようという不安、上司からの叱責や評価など自分の能力に関するものが挙げられます。
年齢を理由にリーダーシップをとらされる、という年齢に応じて求められる責任の重さや、男性だから・女性だからと性別により役割を与えられることがストレッサーになっている人も少なくないかもしれません。
また、リストラの心配や労働条件の変化などの将来に対する不安も生じます。
何がストレッサーになるかは人により異なりますし、時代やその人の立場によっても変化します。
利益の追求だけでなく、社会的責任を果たすことも求められる現代の企業。労働者が抱える問題も幅広くなり、ストレッサーの内容も複雑化しているように感じるのは私だけでしょうか。
自身のストレスチェックとして、厚生労働省のHPで公開されている「5分でできる職場のストレスセルフチェック」が役立ちます。
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/
4つのSTEP(仕事について、最近1ヶ月の状態について、周りの方々について、満足度)による簡単な質問に回答すると、職場におけるストレスが測定できます。
質問は全部で57問。簡単に答えることができ、所要時間は5分程度です。
回答後は「ストレスの原因因子」「ストレスによる心身反応」「ストレス反応への影響因子」について、それぞれどのレベルにあるのかレーダーチャートで表示されます。
私の場合、現在はストレスをあまり抱えておらず、ストレスの原因となる要素もあまりない、という結果が出ました。でもこれは今現在のこと。仕事や家庭で問題が発生すると診断結果も変わってきます。
診断結果は印刷やPDFでの保存が可能です。定期的にチェックしてストレス状態を把握してみてくださいね。
3.物理的ストレッサーとは?
物理的ストレッサーは、暑さや寒さ、湿度、騒音など、環境によるものです。
この中にはエアコンの設定温度を上げ下げする、照明を変えて明るさを調整する、除湿器を使用するなど、自分で対応できるものもあります。
一方で、工事現場の音や日差しの強さなど、自力では改善が難しいものもあります。
オフィスで発生しやすい物理的ストレッサーとしては、冷暖房の設定温度を上司・部下と揉める、隣の席のキーボードの打鍵音がうるさい、などがあります。
オフィスの「あるある」ですが、イライラさせられるもの。解決が可能なストレッサーですが、他人に邪魔をされるケースも見られます。
4.化学的ストレッサーとは?
化学的ストレッサーとは、公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素などです。
「そんな危険なもの、普段触れることはない」と思われそうですが、アルコールやタバコ、食品添加物も化学的ストレッサーの一種。また、香水、柔軟剤の強い香りもストレッサーとなります。
「香水が強い社員がいて不快」「隣人のタバコの臭いが気になる」などは、よく耳にするトラブル。
本人は快適でも、周囲にストレスを与えているケースも少なくないようです。
5.生物的ストレッサーとは?
生物的ストレッサーは、炎症、感染などを指します。
細菌、花粉、カビ、ほこりなどによるアレルギー反応や、ウイルスや細菌などによる炎症や感染症がこれに該当。体の状態も、ストレッサーとされています。
まとめ
ストレスに対処するには、周囲に存在するストレッサーを知ることが大切です。ストレッサーを把握すれば、排除可能なものも確認できたのではないでしょうか。
排除が難しいストレッサーでも、どの程度許容すべきか、また排除すべき優先順位を考えていけば、ストレスにどう向き合うかの方針が立てやすくなるはず。
ストレスから自分を守れるのは自分だけ。まずは自分が認識しているストレッサーを書き出して、確認してみましょう。
参考:
・厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」 用語解説:ストレッサー
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1622/
・厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」 5分でできる職場のストレスセルフチェック
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/
・厚生労働省 令和元年「国民生活基礎調査 」III 世帯員の健康状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf
・厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_gaikyo.pdf